DESIGN FOCUS

青島設計が大切に
していること
#教育へのFOCUS

光のアトリエ

東邦高等学校新創作棟

OUTLINE

本計画は東邦高等学校の美術科の実技専門棟を校舎と別敷地に単独で建設する計画です。学園100周年・美術科の発足30周年の節目に、油絵、日本画、デザイン、彫刻、デッサンの創作活動の拠点となる専用棟として「より制作に集中できる空間」、21世紀型の美術教育へ対応可能なフレキシブルな空間、地域に開かれたギャラリー機能が求められました。

SOLUTION

柔らかな光に包まれる

創作活動に適した光環境を確保するため、2階をワンルームで計画し屋根全体に北向きのハイサイドライトを連続して設けることで、柔らかな自然光が降り注ぐワンフロアのメインアトリエとしました。ハイサイドライトからアール曲面で柔らかな光を導き、ハイサイドライトと並行する小梁を台形状とし下端見付けをミニマムとすることで空間の広がりと明るさ感を向上させています。

また、採光シュミレーションによる窓サイズ・高さなども検証しました。これらの結果として、影のない均質で柔らかな光に満たされた創作のためのニュートラルな空間を実現することができました。
窓のない周囲の壁面は石膏やイーゼル、静物のための収納に全面的に活用し、また可動の収納棚でスペースを分割し、人数や用途に合わせてフレキシブルに空間を可変できる計画としました。照明はイベントや展示などでも利用できるよう調光調色器具を採用し多目的な利用ができる計画としました。

SOLUTION

住宅街に浮かぶホワイトキューブ

本計画地は高校と道路を挟んだ別敷地で住宅街の中に建築する必要がありました。そのため、住宅街に溶け込みかつ街のシンボルにもなり得る意匠性と、限られたスペースと法的制約の中で最大限に効果を発揮する機能美が必要でした。

そこで、外観は平面構成、内部空間の機能がそのまま外観へと表れたシンプルで明快なデザインとしました。ボリュームが大きく閉じた2階は白いせっ器タイルとし、ホワイトキューブを連想させる美術らしさを表現しながら、柔らかな表情によって周辺環境と調和したデザインにしました。ボリュームが小さく地域へ開かれた1階は、ガラス主体の透明性のある外装とし、1階と2階を明快で対比的な構成とすることで、創作棟としてシンボルとなる外観としました。

また、夜間暗くなる住宅街をやさしい光でライトアップし地域に温かいあかりを与える計画としています。

SOLUTION

地域とアートが触れ合う

街に溶け込み街のシンボルになるには、地域の方にアートに触れ、建物に親しみをもってもらう必要がありました。そこで建物1階はホワイトキューブの2階とは対比的にガラスを主体とした透明感のある構成とし、道路面に生徒の作品を展示できるギャラリーを設けました。

また、1階のアトリエはガラス貼りの開かれたアトリエとすることで制作風景が見えるようにしたり、地域の方が参加できるワークショップを開催できるようオープンで直接出入りできるアプローチにしました。

VOICE

設計者の想い

本計画は「創作のための空間をつくる!」という明確なビジョンをもとに計画が進められました。設計開始から竣工まで約1年と短い期間の中で、美術科の先生や学園と密に打合せを重ね、「光にあふれたアトリエ」「シンボルとなるホワイトキューブ」「地域に開かれた施設」のコンセプトを共有し、CGや模型、シュミレーションを用いて分かりやすく手戻りが無いよう早期に設計をまとめました。また、施工期間においても工程の管理、毎週の定例で細かにモノ決めを進め工期内で完成させることができました。

工事中一番印象深かったのは、アトリエのハイサイドライトの型枠が外れた直後に関係者みんなで現地確認をした時です。あらわれた空間の力強さ・光の美しさにみな言葉を飲み込み、しばらく空間を眺めていました。本プロジェクトの成功を確信した瞬間でもありました。

このように、本計画は、施主・設計・施工が明快なビジョンを共有することで、一体となってプロジェクトの完成を迎えることができたことを嬉しく思っています。

これからは、生徒たちがこの建物を創作活動で思い切り使い込み、感性を育み、飛躍してもらえることを期待しています。

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