OUTLINE
兵庫県太子町の約7,000㎡の敷地に、サービス付高齢者向け住宅75戸、クリニック、保育所、カフェレストランからなる複合施設が計画されました。この施設は、地域住民のかかりつけ医として、また疾病を抱えながらも住み慣れた自宅で療養でき自分らしい生活を続けられるよう、医療と介護を一体的に提供し、地域医療の中心的役割を担うことを目指したものです。
MISSION
子供から高齢者まで、多世代が集う地域コミュニティの創造
本施設は、サービス付高齢者向け住宅においては重度認知症・緩和ケア・ストマ―・カテーテルなどの医療ケアが必要な方も入居可能で、クリニックにおいては内科・整形外科をはじめリハビリテーション科や心療内科など様々な科目を備えています。またこの他に託児所やカフェレストランを併設しているため、健常者から患者、乳幼児から終末期の方までが利用します。
このため、多様・多世代の方が快適に交流できる空間づくりが必要とされました。
SOLUTION
自然と建築が一体となった”癒しの森”
施設の中心にみんなが集える中庭を計画しました。中庭の中央部には施設のシンボルとなる大きな芝生広場を配置し、様々なイベントにも利用できるステージを設けました。広場の周囲には四季折々の風景が楽しめる木々や花を植えた散策路や、入居者が育てる菜園を計画し、利用者それぞれが楽しみや生きがいを見つけられる空間としました。
中庭に面した住宅のバルコニーは、パブリック(庭)とプライベート(個室)の中間的な”セミプライベートエリア”と位置づけ、中庭からの視線を遮るスクリーンを設置することで、緑が生活の一部に取り込まれ生き生きとした気持ちになれる居住環境を実現しました。また中庭に面した共用施設の食堂にもスクリーンを設置し、程よく視線を遮りながら緑を楽しめる計画としています。
SOLUTION
地域とのつながりを大切にしたアプローチ空間
敷地の幅いっぱいに歩道及び駐車場を配置したおおらかなアプローチ空間を設けました。道路境界には柵やフェンスを設置せず、また花壇の自然石や駐車場の自然色舗装とすることにより、地域の方を多く迎え入れられる親しみやすいアプローチ空間としました。中庭に通じる歩道には高木や壁面緑化を計画し、緑豊かな中庭との繋がりを持たせています。
VOICE
設計者の想い
本計画は、医療・福祉の一体化により地域医療の中心的役割を果たしたいという理事長の強い想いがあり、構想段階から様々なアイデアが出てきました。特に「施設の一体感」にはこだわりがあり、単に複数の用途の施設が併設されているようなスタイルではなく、それらが一体的に繋がることで多世代の方が生き生きと交流できるとの想いでした。このため理事長のアイデアを一つ一つ具現化しながら、「生き生き」にかかせない自然の力が施設一体化の大きな要素と考え、自然の力が最大限に活かせるように施設に取り込む検討を重ねました。
竣工時はまだ植えた木々も若く、中庭を覆うような緑ではありませんでしたが、長い年月を利用者の方と主に成長していく様子を想像しています。